ドライブレコーダーが無い場合の戦い方。「実況見分調書」の重要性と、信号サイクルや防犯カメラ映像の入手・活用法

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弁護士コラム

ドライブレコーダーが無い場合の戦い方。「実況見分調書」の重要性と、信号サイクルや防犯カメラ映像の入手・活用法

2025.12.10

第1 はじめに:ドライブレコーダーがなくても、諦める必要はありません

交通事故の過失割合を巡り、相手方保険会社から一方的な主張をされ、「こちらにはドライブレコーダーがないから、反論できない」と、不利な条件で示談に応じてしまう被害者の方がいます。

ドライブレコーダーの映像が、事故態様を証明する強力な証拠であることは事実です。しかし、それが無ければ真実を証明できない、ということでは決してありません。

事故の状況を客観的に記録した証拠は、他にも存在します。特に、警察が作成する「実況見分調書」は、ドライブレコーダーがなくとも、相手方の主張を覆し得る極めて重要な証拠となります。

本稿では、ドライブレコーダーがない状況で、納得のいかない過失割合と戦うための具体的な方法について、最重要証拠である「実況見分調書」の役割と、その他の客観的証拠の収集・活用法を解説します。

本稿の構成

第1 はじめに:ドライブレコーダーがなくても、諦める必要はありません

第2 なぜ「客観的証拠」が不可欠なのか

第3 「実況見分調書」の入手と活用

第4 映像証拠の収集:防犯カメラ・他車のドライブレコーダー

第5 信号無視の立証:「信号サイクル表」の活用

第6 Q&A:「ドラレコなし」の過失割合交渉に関する疑問

第7 まとめ:客観的証拠を積み重ね、正当な過失割合を主張しましょう

第2 なぜ「客観的証拠」が不可欠なのか

過失割合の交渉において、客観的な証拠がなぜそれほどまでに重要なのでしょうか。

 

1 「言った・言わない」の水掛け論を避けるため

事故当事者の記憶や主張は、主観的であり、時間経過と共に曖昧になったり、自己に有利な内容に変わったりすることがあります。客観的な証拠がなければ、交渉は「言った・言わない」の水掛け論となり、進展しません。

 

2 保険会社の主張に対抗するため

相手方保険会社は、自社の契約者である加害者の主張に基づいて過失割合を提示してきます。被害者がどれだけ正しい主張をしても、それを裏付ける客観的な証拠がなければ、保険会社がその主張を認めることはほとんどありません。

第3 「実況見分調書」の入手と活用法

ドライブレコーダーがない場合、事故態様を証明するための最も信頼性が高く、重要な証拠となるのが「実況見分調書」です。

 

1 実況見分調書とは

実況見分調書とは、人身事故が発生した場合に、警察官が事故現場で行う「実況見分」の結果を詳細にまとめた捜査書類です。現場見取図や写真が含まれ、事故状況が客観的に記録されています。裁判においても、極めて高い証拠能力が認められています。

 

2 実況見分調書から読み取れる重要情報

⑴ 衝突地点・最終停止位置

当事者双方の車両が、道路のどの地点で衝突し、最終的にどこに停止したかが図示されています。センターラインオーバーや、交差点内での衝突位置などを特定する上で決定的な証拠となります。

 

⑵ ブレーキ痕(スリップ痕)

ブレーキ痕の有無やその長さ、位置が記録されています。これは、どちらがブレーキをかけたか、どのタイミングで危険を認識したか、また、おおよその速度を推測する上で重要な情報です。

 

⑶ 車両の損傷状況

車両のどの部分が、どの程度の損傷を受けたかが写真と共に記録されています。これは、衝突の角度や衝撃の大きさを裏付ける証拠となります。

 

3 入手方法

実況見分調書は、人身事故として警察に届け出ていなければ作成されません。この書類は、検察庁に保管されており、通常は弁護士を通じて取り寄せの手続きを行います。

第4 映像証拠の収集:防犯カメラ・他車のドライブレコーダー

実況見分調書を補強する、あるいはそれに代わる証拠として、事故現場周辺の映像を探すことも重要です。

 

1 周辺施設・店舗の防犯カメラ

事故現場の近くにあるコンビニエンスストア、スーパーマーケット、ガソリンスタンド、銀行、マンションなどに設置されている防犯カメラに、事故の瞬間が記録されている可能性があります。

ただし、プライバシーの問題から、個人からの開示請求には応じてもらえないことがほとんどです。また、映像の保存期間は1~2週間程度と短い場合が多いため、事故後、可及的速やかに弁護士に依頼し、「弁護士会照会」という法的な手続きを通じて、映像の保全と開示を求める必要がある場合があります。

 

2 後続車・対向車等のドライブレコーダー

事故現場に目撃者がいた場合、その方が運転していた車両にドライブレコーダーが搭載されていなかったかを確認し、映像提供の協力を依頼することも有効な手段です。

第5 信号無視の立証:「信号サイクル表」の活用

信号機のある交差点での事故で、双方の信号の色が争点となった場合に、極めて有効な証拠となるのが「信号サイクル表」です。

 

1 信号サイクル表とは

信号サイクル表とは、当該交差点の信号機が、何秒間青で、何秒間黄色、何秒間赤(及び全赤時間)かという、信号の周期パターンを記録したデータです。これは、各都道府県の公安委員会(警察)が管理しています。

 

2 活用方法

実況見分調書に記載された衝突位置や車両の動き、目撃者の証言などと、この信号サイクル表を照らし合わせることで、事故発生時刻にどちらの信号が赤であったかを、数学的・論理的に証明できる場合があります。

 

3 入手方法

個人で入手する場合は情報公開請求の手続きによりますが、通常は弁護士が「弁護士会照会」の手続きを利用して警察から取り寄せます。

第6 Q&A:「ドラレコなし」の過失割合交渉に関する疑問

Q1 物損事故として処理したため、実況見分調書がありません。

A1 物損事故の場合、実況見分調書に代わる「物件事故報告書」が作成されますが、これは簡易的な書類で証拠価値は高くありません。もし怪我をしているのであれば、速やかに人身事故に切り替える手続きを行うことで、実況見分を実施してもらえる可能性があります。

 

Q2 防犯カメラの映像を自分で確認しに行きましたが、断られました。

A2 個人情報保護の観点から、店舗などが個人の求めに応じて映像を開示することは稀です。弁護士による照会手続き(弁護士会照会)が必要となるため、まずは弁護士にご相談ください。

 

Q3 相手車両の損傷写真だけでも、証拠になりますか?

A3 はい、なります。車両の損傷部位や傷の付き方(擦り傷か、へこみか等)は、衝突時の速度や角度を推測する上で重要な情報を含んでいます。ご自身の車両の損傷写真と合わせて、専門家が分析することで、事故態様の解明に繋がることがあります。

 

Q4 事故直後に気が動転していて、警察での説明が曖昧になってしまいました。

A4 事故直後の説明が、必ずしも全て正確とは限りません。実況見分調書に不利な記載があったとしても、他の客観的証拠(防犯カメラ映像など)と矛盾する点があれば、その記載の信用性を争うことは可能です。

第7 まとめ:客観的証拠を積み重ね、正当な過失割合を主張しましょう

ドライブレコーダーがないからといって、保険会社の提示する不利な過失割合を諦めて受け入れる必要は全くありません。

事故の真実を明らかにするための客観的な証拠は、他にも存在します。特に、人身事故の際に作成される「実況見分調書」は、事故態様を明らかにする上で、重要な証拠です。

この実況見分調書や、周辺の防犯カメラ映像や信号サイクル表、目撃者の証言といった他の証拠を丹念に収集し、組み合わせることで、相手方保険会社の主張を覆し、正当な過失割合を認めさせることが可能になります。

しかし、これらの証拠の多くは、個人で収集することが難しく、複雑な手続きを取らなければならない場合があります。

ドライブレコーダーがなく、過失割合が問題になりそうな場合は、速やかに交通事故問題に精通した弁護士にご相談ください。

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