過失割合は誰がどうやって決める?保険会社の提示する割合が絶対ではない理由と、交渉の第一歩

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弁護士コラム

過失割合は誰がどうやって決める?保険会社の提示する割合が絶対ではない理由と、交渉の第一歩

2025.12.24

第1 はじめに:提示された「過失割合」に、安易に同意してはいけません

交通事故の示談交渉が始まると、多くの場合、加害者側の保険会社担当者から「この事故の過失割合は、あなたにも〇割あります」といった連絡があります。

被害者の方としては、「自分は全く悪くないのに、なぜ責任の一端を負わなければならないのか」と、この過失割合の提示に納得できないと感じることが、交通事故の交渉において最も多い争点の一つです。

しかし、保険会社から提示された過失割合を、よく理解しないまま安易に受け入れてはいけません。その数字は、あくまで保険会社の一方的な見解に過ぎず、法的に確定したものではないからです。

本稿では、そもそも過失割合とは何か、誰がどのようにして決めるのか、そして保険会社の提示が絶対ではない理由と、納得できない割合を覆すための交渉の第一歩について、法的な観点から解説します。

本稿の構成

第1 はじめに:提示された「過失割合」に、安易に同意してはいけません

第2 過失割合が賠償額に与える「過失相殺」という影響

第3 過失割合の決定プロセス:「誰が」「何を基準に」決めるのか

第4 保険会社が提示する割合が絶対ではない3つの理由

第5 納得できない過失割合を覆すための交渉の第一歩

第6 Q&A:「過失割合」に関する疑問

第7 まとめ:過失割合は交渉の出発点です

第2 過失割合が賠償額に与える「過失相殺」という影響

過失割合が示談交渉で重要な争点となるのは、それが最終的に受け取れる賠償金の額に直接的な影響を与えるからです。

 

1 過失割合とは

過失割合とは、発生した交通事故に対する、当事者双方の不注意(過失)の度合いを、客観的な基準に照らして割合で示したものです。例えば、「80:20」「90:10」のように表現されます。

 

2 過失相殺の仕組み

被害者側にも過失があると判断された場合、その過失割合に応じて、受け取れる損害賠償金の総額から一定割合が減額されます。これを「過失相殺」といいます。

例えば、被害者に発生した損害の総額(治療費、休業損害、慰謝料など)が500万円で、被害者の過失割合が2割(過失割合80:20)とされた場合、

500万円 × 20% = 100万円

が賠償金から差し引かれ、被害者が実際に受け取れる金額は400万円となります。過失割合が1割違うだけで、賠償額は数十万円、場合によっては数百万円単位で変動します。

第3 過失割合の決定プロセス:「誰が」「何を基準に」決めるのか

この重要な過失割合は、どのようにして決まるのでしょうか。

 

1 誰が決めるのか

交通事故の過失割合を最終的に法的な拘束力をもって決定できるのは、「裁判所」だけです。

示談交渉の段階では、まず当事者双方(実質的には双方の保険会社)が協議を行い、その割合について「合意」することで決まります。

したがって、保険会社の担当者が提示する過失割合は、あくまで「保険会社の見解」に過ぎず、被害者がそれに納得できなければ、合意する必要は一切ありません。

 

2 何を基準に決めるのか

保険会社も、そして最終的に判断する裁判所も、主に過去の膨大な交通事故裁判の判例を類型化し、整理した書籍を基準として過失割合を判断します。

 

⑴ 基準となる書籍

東京地裁民事交通訴訟研究会が編集した『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準』(通称:別冊判例タイムズ)という書籍があり、これが実務上の最も重要な基準となっています。ここには、交差点での直進車同士の事故、右折車と直進車の事故など、様々な事故類型ごとの「基本過失割合」が示されています。

 

⑵ 修正要素

基本過失割合は、個別の事故状況に応じて修正が加えられます。例えば、夜間であったこと、見通しの悪い交差点であったこと、一方に著しい速度違反があったことなどが「修正要素」として考慮され、基本割合が加算・減算されます。

第4 保険会社が提示する割合が絶対ではない3つの理由

保険会社が提示する過失割合は、前述の基準に基づいていますが、それが必ずしも客観的で公正なものとは限りません。

 

1 理由1:前提となる事実認定が誤っている可能性

保険会社は、主に自社の契約者である加害者の言い分に基づいて事故状況を把握し、過失割合を判断している場合があります。被害者の主張と食い違う事実を前提にしていたり、加害者に有利なように事実を解釈したりしている可能性があります。

 

2 理由2:被害者に有利な「修正要素」が考慮されていない可能性

保険会社は、支払う賠償金を抑制する立場にあるため、被害者に有利となる修正要素(例:相手方のウインカーの出し遅れ、ながらスマホ運転など)を積極的に認定しない傾向があります。

 

3 理由3:「判例タイムズ」に該当しない非典型な事故である可能性

駐車場内の事故や、道路外出入り時の事故など、判例タイムズに明確な基準が示されていない非典型な事故は数多く存在します。このような場合、保険会社が提示する割合は、あくまで自社に有利な解釈に基づく一見解に過ぎず、争う余地が十分にあります。

第5 納得できない過失割合を覆すための交渉の第一歩

保険会社から提示された過失割合に納得できない場合、以下の手順で対応することが交渉の第一歩となります。

 

1 手順1:安易に同意せず、根拠の説明を求める

まず、「ご提示の過失割合には同意できません」と明確に意思表示をします。その上で、「その過失割合の算定根拠について、判例タイムズのどの類型を参考に、どのような修正要素を考慮したのか、書面で具体的に説明してください」と要求します。

 

2 手順2:客観的な証拠を確保・収集する

相手の主張を覆すには、客観的な証拠が不可欠です。

ア ドライブレコーダーの映像、事故現場の写真

イ 実況見分調書などの刑事記録(人身事故の場合)
警察が作成する実況見分調書は、事故態様を証明する上で最も重要な証拠の一つです。弁護士を通じて取り寄せることが可能です。

ウ 周辺の防犯カメラ映像

 

3 手順3:証拠に基づいて具体的な反論を行う

収集した証拠と、判例タイムズなどの基準に基づき、「実況見分調書によれば、相手方車両が停止線を越えていたため、当方の過失は基本割合より10%減算されるべきです」といった形で、具体的な根拠を示して反論します。

 

4 手順4:弁護士に相談する

証拠の収集や分析、法的な基準に基づく主張の組み立ては、専門的な知識を要します。保険会社の提示に納得できない時点で、速やかに交通事故問題に精通した弁護士に相談することが、正当な過失割合を勝ち取るための最も有効な手段です。

第6 Q&A:「過失割合」に関する疑問

Q1 事故の処理をした警察官は、過失割合を決めてくれないのですか?

A1 警察は、あくまで犯罪捜査や交通違反の取り締まりを行う機関であり、民事上の紛争である損害賠償問題には介入しません(民事不介入の原則)。したがって、警察が過失割合を判断することはありません。

 

Q2 相手の運転手が「100%私が悪いです」と認めていても、過失を主張されますか?

A2 はい、その可能性は十分にあります。当事者が事故現場で過失を認めても、その後の示談交渉は保険会社が行います。保険会社は、当事者の言動とは別に、客観的な事故状況に基づいて過失割合を判断し、主張してきます。

 

Q3 こちらは停車していたのに、過失があると言われました。

A3 駐停車違反の場所に停車していた場合など、極めて例外的な状況で過失が問われる可能性はゼロではありませんが、原則として、適法に停車中の車両に衝突した場合は、停車していた側の過失は0%です。保険会社の主張に納得できない場合は、弁護士に相談すべきです。

 

Q4 自分の保険会社の担当者が「相手の提示は妥当だ」と言っています。

A4 ご自身の保険会社の担当者は、必ずしもあなたの利益を最大限に代弁してくれるとは限りません。早期解決を優先したり、相手方保険会社との関係を考慮したりする場合があります。担当者の意見を鵜呑みにせず、疑問があればセカンドオピニオンとして弁護士に相談することが重要です。

 

Q5 弁護士に依頼すれば、必ず過失割合は変わりますか?

A5 必ず変わると断言はできません。しかし、弁護士が介入し、法的な観点から証拠を精査・分析し、適切に主張を行うことで、被害者に有利な形で過失割合が修正される可能性は十分にあります。

第7 まとめ:過失割合は交渉の出発点です

加害者側の保険会社が提示する過失割合は、法的に確定したものではなく、あくまで「交渉の出発点」に過ぎません。

その提示に安易に同意してしまうと、本来受け取れるはずだった正当な賠償金を得られなくなるという、大きな不利益に直結します。

納得できない過失割合を覆すためには、客観的な証拠を集め、法的な基準に基づいて粘り強く交渉する必要があります。そのプロセスは専門的な知識と経験を要するため、一人で悩まず、できるだけ早い段階で専門家である弁護士にご相談ください。

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