顔や身体に残った傷跡。「醜状障害」として後遺障害認定を受けるための基準

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弁護士コラム

顔や身体に残った傷跡。「醜状障害」として後遺障害認定を受けるための基準

2026.01.07

第1 はじめに:交通事故で残った傷跡と「醜状障害」

交通事故によって、顔や手足など、人目につく場所に傷跡が残ってしまうことがあります。この傷跡は、身体的な痛みだけでなく、深い精神的苦痛を被害者の方に与え続けます。

法律上、このような事故によって残った傷跡は、「醜状障害(しゅうじょうしょうがい)」として後遺障害に該当し、正当な賠償の対象となる可能性があります。

しかし、醜状障害として後遺障害等級が認定されるためには、その傷跡が残存した「部位」と「大きさ・程度」について、自賠責保険が定める極めて厳格な基準をクリアする必要があります。

本稿では、顔や身体に残った傷跡が後遺障害として認められるための具体的な認定基準について、部位ごとに分かりやすく解説します。

本稿の構成

第1 はじめに:交通事故で残った傷跡と「醜状障害」

第2 後遺障害としての「醜状障害」の考え方

第3 「外貌の醜状」に関する後遺障害等級と認定基準

第4 「露出面の醜状」に関する後遺障害等級と認定基準

第5 適切な等級認定を獲得するためのポイント

第6 Q&A:「醜状障害」に関する疑問

第7 まとめ:正当な認定のためには、正確な立証が不可欠です

第2 後遺障害としての「醜状障害」の考え方

醜状障害は、傷跡が残った身体の部位によって、大きく2つのカテゴリーに分けて評価されます。

 

1 外貌(がいぼう)の醜状

「外貌」とは、頭部、顔面部、頸部(首)のように、日常的に人目にさらされる部分を指します。外貌の醜状は、他人に与える印象を大きく左右するため、後遺障害としても重く評価される傾向にあります。

 

2 露出面(ろしゅつめん)の醜状

「露出面」とは、腕や足のうち、半袖や半ズボンなどを着用した際に、日常的に露出する可能性のある部分を指します。具体的には、「上肢(腕)については肘関節以下」、「下肢(足)については膝関節以下」の部分です。

第3 「外貌の醜状」に関する後遺障害等級と認定基準

頭・顔・首に残った傷跡は、その大きさや種類によって、主に以下の2つの等級に区分されます。

 

1 第7級12号:「外貌に著しい醜状を残すもの」

以下のいずれかに該当する場合に認定されます。

 

⑴ 頭部

てのひら(指の部分は含みません)の大きさ以上の瘢痕、または頭蓋骨にてのひら大以上の欠損が残った場合。

 

⑵ 顔面部

鶏卵の大きさ以上の瘢痕、長さ5センチメートル以上の線状痕(線状の傷跡)、または10円硬貨大以上の組織陥凹(へこみ)が残った場合。

⑶ 頸部(首)

てのひら大以上の瘢痕が残った場合。

 

2 第12級14号:「外貌に醜状を残すもの」

以下のいずれかに該当する場合に認定されます。

⑴ 頭部

鶏卵の大きさ以上の瘢痕、または鶏卵大以上の頭蓋骨欠損が残った場合。

⑵ 顔面部

10円硬貨大以上の瘢痕、または長さ3センチメートル以上の線状痕が残った場合。

⑶ 頸部(首)

鶏卵の大きさ以上の瘢痕が残った場合。

第4 「露出面の醜状」に関する後遺障害等級と認定基準

腕(肘以下)や足(膝以下)の日常的に露出しうる部分に残った傷跡は、主に以下の等級で評価されます。

 

1 第14級4号:「上肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの」

 

⑴ 対象部位

腕のうち、肘関節以下の部分(手の甲を含む)。

 

⑵ 認定基準

その部位にてのひら大(指の部分は含みません)の大きさの傷跡が残った場合に認定されます。

 

2 第14級5号:「下肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの」

 

⑴ 対象部位

足のうち、膝関節以下の部分(足の甲を含む)。

 

⑵ 認定基準

その部位にてのひら大(指の部分は含みません)の大きさの傷跡が残った場合に認定されます。

第5 適切な等級認定を獲得するためのポイント

醜状障害の認定を受けるためには、後遺障害診断書と、それを補足する資料が重要となります。

 

1 後遺障害診断書への正確な記載

主治医(主に形成外科医)に後遺障害診断書を作成してもらう際、傷跡の種類(瘢痕、線状痕など)、性状(色、凹凸など)、そして最も重要な「大きさ(長さと幅、面積)」を、定規などで正確に測定した上で記載してもらう必要があります。

 

2 傷跡が鮮明にわかる写真の撮影

後遺障害診断書とあわせて、傷跡の状態を客観的に示す写真を提出することが有効です。その際、傷跡の隣に定規を当てて、その大きさが明確にわかるように撮影することがポイントです。

 

3 症状固定のタイミング

傷跡は、時間の経過と共に状態が変化(成熟)します。一般的に、事故や最終手術から約6ヶ月が経過し、医師が「これ以上、傷跡の状態に大きな変化はない」と判断した時点が症状固定のタイミングとなります。

第6 Q&A:「醜状障害」に関する疑問

Q1 顔に複数の小さな傷跡が残りました。合計すれば基準の大きさになりますか?

A1 複数の瘢痕や線状痕が、互いに隣接または集合しており、全体として一つの大きな傷跡として認識できる状態であれば、それらの面積や長さを合算して判断される可能性があります。

 

Q2 形成外科で傷跡をきれいにする手術(瘢痕形成術)を受けました。後遺障害の認定に影響しますか?

A2 醜状障害は、症状固定時点、つまり、形成外科での治療が終了した後に残った傷跡の状態で判断されます。なお、その手術費用は、必要かつ相当な範囲で、治療費として加害者側に請求することが可能です。

 

Q3 やけどの痕(ケロイド)や、皮膚の色の変化(色素沈着)も醜状障害になりますか?

A3 はい、なります。醜状障害は、切り傷による線状痕や瘢痕だけでなく、やけどによる瘢痕(ケロイド)や、皮膚の色が濃くなる「色素沈着」、白く抜けてしまう「色素脱失」なども、その範囲と程度に応じて認定の対象となります。

 

Q4 醜状障害の認定は、どのように行われるのですか?

A4 原則として、提出された後遺障害診断書と写真などによる書面審査ですが、特に外貌の醜状など、等級が高い事案では、自賠責保険の調査事務所で担当者による面接(面談)が行われ、直接傷跡の状態を確認されることがあります。

 

Q5 男性と女性で、慰謝料の金額は変わりますか?

A5 後遺障害等級が同じであれば、自賠責保険から支払われる後遺障害慰謝料の金額に男女差はありません。しかし、その後の示談交渉や裁判においては、醜状が将来の結婚や職業選択に与える影響などを考慮し、女性の方が男性よりも高額な慰謝料が認められる可能性はあります。

第7 まとめ:正当な認定のためには、正確な立証が不可欠です

交通事故によって顔や身体に残ってしまった傷跡は、被害者にとって生涯にわたる精神的苦痛の原因となります。そして、それは「醜状障害」として、法的に正当な補償がなされるべき後遺障害です。

しかし、醜状障害の等級認定は、傷跡の部位や大きさについて、センチメートル単位の極めて厳格な基準で判断されます。そのため、後遺障害診断書に、傷跡の大きさが正確に測定・記載されていることが、認定の成否を分ける最も重要なポイントとなります。

医師に診断書作成を依頼する際の伝え方や、証拠として提出する写真の撮り方など、適切な等級認定を得るためには、専門的な知識に基づいた準備が不可欠です。

ご自身の傷跡が後遺障害に該当するのか、また、どのような準備をすればよいのかにご不安がある場合は、示談を進める前に、交通事故問題に精通した弁護士にご相談ください。

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