整骨院・接骨院への通院費は認められる?保険会社と揉めずに治療費として認めてもらうための3つのルール

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弁護士コラム

整骨院・接骨院への通院費は認められる?保険会社と揉めずに治療費として認めてもらうための3つのルール

2026.04.02

第1 はじめに:整骨院・接骨院への通院における注意点

交通事故、特にむち打ち症などの傷害を負った際に、痛みやこりの緩和を目的として、整形外科と並行して整骨院や接骨院(以下「整骨院等」とします)への通院を希望される被害者の方は少なくありません。

しかし、医師の診断に基づかず、自己判断で整骨院等に通院を開始した場合、その施術費が交通事故の損害として認められず、加害者側の保険会社から支払いを拒否されるといったトラブルが頻発しています。最悪の場合、慰謝料が減額されたり、後遺障害の認定で不利益を被ったりする可能性もあります。

本稿では、整骨院等での施術費を、交通事故の正当な治療費として保険会社に認めてもらうために、被害者が遵守すべき法的に重要な「3つのルール」について、専門家の視点から解説します。

本稿の構成

第1 はじめに:整骨院・接骨院への通院における注意点

第2 大前提:治療の基本は整形外科(医師)の診断・管理下にあること

第3 施術費を正当な損害として認めてもらうための「3つのルール」

第4 ルールを遵守しない場合に生じる具体的なリスク

第5 Q&A:「整骨院・接骨院への通院」に関する疑問

第6 まとめ:医師の指示のもと、適切な通院を心がけてください

第2 大前提:治療の基本は整形外科(医師)の診断・管理下にあること

整骨院等への通院を検討する前に、まず整形外科(病院・クリニック)と整骨院等の法的な位置づけの違いを理解する必要があります。

1 医師と柔道整復師の資格の違い

整形外科で治療を行うのは「医師」ですが、整骨院等で施術を行うのは「柔道整復師」です。医師法上、傷病に対する「診断」や、薬の処方、外科手術といった医療行為は医師にしか認められていません。

柔道整復師は、骨折・脱臼・打撲・捻挫に対する施術は認められていますが、それは医師の医療行為を代替するものではありません。

2 診断書の作成権限

損害賠償請求の過程で必要となる、警察提出用の診断書や、後遺障害等級認定の申請に不可欠な「後遺障害診断書」を作成できるのは、医師のみです。

したがって、交通事故の治療は、まず整形外科で医師の確定診断を受け、その後の治療全体が医師の管理下で行われる、ということが法的な大原則となります。

第3 施術費を正当な損害として認めてもらうための「3つのルール」

整骨院等での施術費を、保険会社との間で争いなく治療費として認めてもらうためには、以下の3つのルールを満たすことが重要です。

1 ルール1:【医師の指示・同意】整形外科医から施術を受けることへの積極的な指示・同意を得ること

これは最も重要なルールです。保険会社は、整骨院等での施術の必要性を判断するにあたり、医師の意見を最重要視します。

⑴ 明確な指示・同意

まず主治医に、整骨院等での施術を希望する旨を相談し、「〇〇整骨院で△△という施術を受けることを許可します」といった、具体的な指示や同意を得ることが理想的です。その際、医師にその旨をカルテに記載してもらうようお願いしてください。

⑵ 黙示の同意

明確な指示がない場合でも、医師が整骨院等への通院の事実を認識しており、それに対して特段の反対意見を述べていない状況(黙示の同意)も、施術の必要性を推認させる一要素にはなります。しかし、保険会社からその点を争われる可能性は残ります。

2 ルール2:【症状との関連性】施術内容が、事故による症状の改善に有効・相当であること

行われる施術が、交通事故によって生じた傷害(医師が診断した傷病名)と関連し、その症状の改善に効果的である必要があります。

例えば、首のむち打ち症(頚椎捻挫)と診断されているにもかかわらず、事故と無関係な腰や足へのマッサージを長時間受けている場合や、単なるリラクゼーション目的の施術などは、賠償の対象として認められません。

3 ルール3:【適切な施術頻度・期間】施術の頻度や期間が、症状の程度に照らして合理的であること

症状の回復具合に見合わない過剰な頻度での施術や、漫然とした長期の施術は、保険会社からその必要性を疑われます。

⑴ 整形外科への定期的通院の必要性

特に重要なのは、整骨院等に通院している期間中も、必ず並行して整形外科へ定期的に(少なくとも月1回以上)通院し、医師の診察を受けることです。整形外科への通院が全くなく、整骨院等にのみ通院している場合、その期間の施術の必要性自体を保険会社から全面的に否定されるリスクがあります。

⑵ 症状に応じた頻度

症状が軽快してきたにもかかわらず、急性期と同じペースで毎日通院を続けると、過剰な施術と判断される可能性があります。症状の変化に応じて、施術の頻度も適切に見直す必要があります。

第4 ルールを遵守しない場合に生じる具体的なリスク

上記の3つのルール、特に「医師の指示・同意」と「整形外科への定期的通院」を怠った場合、以下のような不利益が生じる可能性があります。

1 施術費の支払い拒否・打ち切り

保険会社が施術の必要性を認めず、施術費の支払いを拒否したり、途中で打ち切ったりします。被害者が立て替えた費用も、後の示談交渉で回収できなくなる可能性があります。

2 入通院慰謝料の減額

整骨院等への通院が、法的にみて治療の必要性・相当性がなかったと判断された場合、その通院期間や日数は、入通院慰謝料を算定する際の基礎から除外され、結果として慰謝料が減額されることがあります。

3 後遺障害等級認定での不利益

後遺障害の審査では、初診から症状固定までの一貫した症状の経過が重視されます。整形外科への通院が途絶え、医師の管理下にない期間があると、症状の連続性が断絶したと判断され、後遺障害診断書を作成してもらえなかったり、作成されてもその信用性が低いと評価されたりして、適切な等級認定を受けられないリスクが高まります。

第5 Q&A:「整骨院・接骨院への通院」に関する疑問

Q1 保険会社の担当者から「整骨院に通ってもいいですよ」と言われました。これだけで大丈夫ですか?

A1 不十分です。保険会社担当者の同意は、あくまで「施術費を支払う窓口にはなる」という程度の意味しかありません。法的な意味での施術の必要性を認めたことにはならず、後になってから「医師の指示がない」などの理由で、支払いを覆してくる可能性があります。必ず医師の指示・同意を得てください。

Q2 医師が整骨院への通院に協力的ではありません。どうすれば良いですか?

A2 医師によっては、整骨院等での施術に否定的な見解を持つ方もいます。まずは、なぜ施術を受けたいのか(例:整形外科の診療時間内に通えない、温熱療法で痛みが和らぐなど)を具体的に説明し、理解を求めてください。それでも同意が得られない場合は、安易に自己判断で通院せず、別の整形外科医にセカンドオピニオンを求めるなどの対応を検討すべきです。

Q3 整形外科より整骨院の方が症状が楽になる気がします。整形外科にも通わないとダメですか?

A3 はい、必ず並行して通院してください。前述の通り、整形外科への定期的な通院は、治療全体の管理と、法的な賠償請求の観点から不可欠です。整骨院等での施術で症状が緩和される実感があったとしても、医師による経過観察は必ず受ける必要があります。

Q4 整骨院で健康保険は使えますか?

A4 骨折・脱臼・打撲・捻挫などの急性的な外傷性の症状に対しては、健康保険が適用される場合があります。しかし、慢性的な肩こりなど、適用対象外の症状もあります。交通事故の場合、まずは医師の診断を受け、その上で整骨院等に健康保険の適用について確認するのが確実です。

Q5 鍼灸院やマッサージ、カイロプラクティックの費用も認められますか?

A5 これらの施術は、原則として賠償の対象とはなりにくい傾向にあります。ただし、医師が治療上、特に有効であるとして具体的な指示を出しているなど、極めて例外的な場合に限り、認められる余地があります。基本的には、整骨院等以上に、その必要性の立証は困難であると認識しておくべきです。

第6 まとめ:医師の指示のもと、適切な通院を心がけてください

交通事故の治療において、整骨院・接骨院での施術が有効な場合があります。しかし、その施術費が法的な損害として認められるためには、厳格な条件を満たす必要があります。

最も重要なことは、全ての治療が「医師の診断・管理下」で行われるということです。自己判断で整骨院等への通院を開始するのではなく、必ず事前に主治医に相談し、その指示・同意を得てください。そして、整骨院等への通院中も、必ず整形外科への定期的な通院を継続してください。

これらのルールを守ることが、保険会社との無用な紛争を避け、ご自身の受けた損害に対する正当な賠償を確保するための鍵となります。

通院方法について少しでも不安や疑問があれば、通院を開始する前に、交通事故問題に精通した弁護士にご相談ください。

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