弁護士コラム

肋骨骨折後の痛みは後遺障害。変形・神経症状で等級認定を得るためのポイント

2026.05.14

第1 はじめに:肋骨骨折後の長引く痛みと後遺障害の可能性

交通事故で胸部を強打し、肋骨を骨折した場合、「骨がつけば治る」「後遺障害にはならない」と説明されることが少なくありません。

確かに、多くの肋骨骨折は、胸部バンドなどで固定し、安静にすることで治癒に向かいます。しかし、中には骨の癒合後も、深呼吸や体をひねる動作で痛みが走るなど、慢性的な症状に悩まされる被害者の方もいます。

このような長引く痛みは、気のせいではありません。その痛みの原因が、骨の不適切な癒合(変形癒合)や、神経の損傷(肋間神経痛など)に起因する可能性があり、法的に「後遺障害」として認定され、別途、慰謝料などの賠償を受けられる可能性があります。

本稿では、肋骨骨折が後遺障害として認定されるための医学的・法的な条件、痛みが続く場合に被害者がとるべき対応、そして後遺障害が認定された場合に請求できる賠償金の内訳について解説します。

本稿の構成

第1 はじめに:肋骨骨折後の長引く痛みと後遺障害の可能性

第2 肋骨骨折で後遺障害が認定される主なケース

第3 痛みが続く場合に被害者がとるべき対処法

第4 請求できる損害賠償金の内訳

第5 Q&A:「肋骨骨折と後遺障害」に関する疑問

第6 まとめ:諦めずに、後遺障害の認定を目指しましょう

第2 肋骨骨折で後遺障害が認定される主なケース

肋骨骨折の後遺症が、自賠責保険における後遺障害として認定される場合、主に「変形障害」と「神経症状」の2つの観点から評価されます。

1 ケース1:骨の変形を理由とする「変形障害」

⑴ 該当する等級

後遺障害等級12級5号:「鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの」

⑵ 認定の基準と立証

「著しい変形」とは、裸体になった際に、骨の変形が外部から見て明らかにわかる程度のものを指します。レントゲン写真上で変形が確認できるだけでは足りず、視覚的に認識できるレベルの変形が求められます。

通常のレントゲンでは分かりにくい不適切な位置での癒合(変形癒合)や胸郭の陥凹などを証明するためには、CT検査が有効な証拠となります。

2 ケース2:痛みを理由とする「神経症状」

骨の癒合が良好であっても痛みが続く場合、それは神経系の損傷に起因する「神経障害性疼痛」である可能性を検討する必要があります。これは、単なる治癒過程の痛みではなく、神経系そのものが障害されたことによる独立した症状であり、その医学的根拠を示すことが後遺障害認定の鍵となります。

⑴ 肋間神経痛

肋骨に沿って走行する肋間神経が、骨折した骨の端や、治癒過程で形成される仮骨によって圧迫・損傷されることで生じる神経痛です。呼吸、咳、体をひねる動作などで悪化する、鋭い、刺すような痛みが特徴です。神経ブロック注射などの治療歴は、症状の存在を裏付ける一助となります。

⑵ 胸郭出口症候群(TOS)

第一肋骨や鎖骨の骨折を伴う場合に、腕へ向かう神経の束(腕神経叢)が圧迫され、腕や手指に痛みやしびれが生じることがあります。医師による誘発テスト(モーレーテスト、ルーステストなど)で症状が再現されれば、客観的な他覚所見となります。

⑶ 後遺障害等級との関係

これらの神経症状は、その証明の程度によって、主に2つの等級に区分されます。

ア 後遺障害等級14級9号:「局部に神経症状を残すもの」

残存する痛みが、事故様態や治療経過、症状の一貫性などから、医学的に「説明可能」な場合に認定されます。画像所見がなくても、肋間神経痛などの診断がなされ、症状の訴えが継続していれば認定の可能性があります。

イ 後遺障害等級12級13号:「局部に頑固な神経症状を残すもの」

残存する痛みの原因が、CT検査などによって、変形癒合した骨が神経を圧迫しているといった形で、医学的に「証明可能」な場合に認定されます

第3 痛みが続く場合に被害者がとるべき対処法

肋骨骨折後に痛みが続き、後遺障害の認定を目指すためには、治療段階から計画的に対応することが重要です。

1 整形外科への定期的な通院を継続する

痛みが残っているにもかかわらず、自己判断で通院をやめてしまうと、「症状が軽快した」と判断され、後の後遺障害認定で不利になります。医師の指示に従い、定期的に通院を継続してください。

2 痛みの内容を具体的に、かつ継続的に医師に伝える

診察の際には、「深呼吸をすると、折れた部分がズキッと痛む」「咳をすると激痛が走る」など、肋間神経痛を疑わせるような症状を含め、どのような時に、どのように痛むのかを具体的に、かつ毎回、継続して伝えてください。その訴えがカルテに記録されることが、症状の一貫性を証明する上で重要となります。

3 痛みの原因を特定するための精密検査を検討する

通常のレントゲン検査で骨の癒合が確認されても痛みが続く場合、主治医に相談の上、CT検査などの精密な画像検査を検討してください。レントゲンでは判別できなかった骨の不整(わずかなズレや不完全な癒合)が見つかることがあり、それが後遺障害12級13号の認定に必要な客観的所見となる可能性があります。

第4 請求できる損害賠償金の内訳

肋骨骨折を負った場合、請求できる損害賠償は、症状固定を境に、それ以前のものと、それ以後のもの(後遺障害に関するもの)に大別されます。

1 症状固定までに請求できる主な損害

⑴ 治療費

診察費、検査費、薬代、胸部バンドの費用などです。

⑵ 休業損害

骨折による痛みで仕事を休んだことにより生じた収入の減少分です。

⑶ 入通院慰謝料

骨折の治療のために入院や通院を余儀なくされたことによる精神的苦痛に対する賠償です。

2 後遺障害が認定された場合に請求できる損害

⑴ 後遺障害慰謝料

後遺障害が残ったことによる将来にわたる精神的苦痛に対する賠償です。弁護士(裁判)基準による慰謝料額の目安は、14級9号で110万円、12級5号および12級13号で290万円です。

⑵ 逸失利益

後遺障害によって労働能力が低下し、将来得られたはずの収入が得られなくなったことに対する補償です。被害者の年齢、年収、後遺障害等級に応じた労働能力喪失率などを用いて算出されます。

第5 Q&A:「肋骨骨折と後遺障害」に関する疑問

Q1 レントゲンで「骨はきれいにくっついている」と言われましたが、まだ痛みます。後遺障害は無理ですか?

A1 諦める必要はありません。骨が癒合していても、痛みが「外傷後肋間神経痛」などの神経障害性疼痛に起因する可能性があり、治療経過や症状の一貫性から医学的に説明できれば、後遺障害として認定される可能性があります。

Q2 事故から半年経ちますが、まだ痛みます。治療はいつまで続けるべきですか?

A2 治療を継続しても症状の改善が見込めなくなった時点(症状固定)まで、医師の指示に従い治療を継続すべきです。肋骨骨折の場合、一般的に6ヶ月程度で症状固定と判断されることが多いですが、個別の症状によります。

Q3 保険会社から「肋骨骨折で後遺障害は認められません」と断言されました。

A3 それは保険会社の一方的な見解です。残存する症状が変形障害や神経症状として後遺障害に該当するケースは存在します。保険会社の言葉を鵜呑みにせず、専門家である弁護士に相談してください。

Q4 胸部バンドで固定するだけの治療で、後遺障害は認められますか?

A4 はい、治療内容が後遺障害の認定に直接影響することはありません。肋骨骨折の治療は、安静と固定が基本です。重要なのは、その治療を経てもなお、痛みなどの症状が残存しているという事実です。

Q5 CT検査を受けるべきですか?

A5 CT検査は、レントゲンでは分かりにくい骨の状態を詳細に確認できる画像検査です。骨の変形が痛みの原因として疑われる場合には、客観的な証明のために有力な証拠となり得るため、主治医と相談の上で実施を検討する価値があります。

第6 まとめ:諦めずに、後遺障害の認定を目指しましょう

「肋骨骨折は後遺障害にならない」という考えは、正確ではありません。骨の変形(変形癒合)や、それによる神経への影響(外傷後肋間神経痛など)が原因で症状が残存すれば、それは後遺障害に該当する可能性があります。

しかし、痛みの存在を客観的に証明することは容易ではなく、後遺障害として認定されるためには、治療段階からの適切な対応が不可欠です。

具体的には、症状固定まで整形外科への定期的な通院を継続し、痛みの具体的な内容を医師に伝え続け、カルテに記録してもらうことが重要となります。また、必要に応じてCT検査などの精密検査を受けることも検討すべきです。

肋骨骨折後の長引く痛みにお悩みの場合、また、保険会社の対応に疑問を感じた場合は、症状固定を迎える前に、交通事故と後遺障害問題に精通した弁護士にご相談ください。

「肋骨骨折は後遺障害にならない」という考えは、正確ではありません。骨の変形(変形癒合)や、それによる神経への影響(外傷後肋間神経痛など)が原因で症状が残存すれば、それは後遺障害に該当する可能性があります。

しかし、痛みの存在を客観的に証明することは容易ではなく、後遺障害として認定されるためには、治療段階からの適切な対応が不可欠です。

具体的には、症状固定まで整形外科への定期的な通院を継続し、痛みの具体的な内容を医師に伝え続け、カルテに記録してもらうことが重要となります。また、必要に応じてCT検査などの精密検査を受けることも検討すべきです。

肋骨骨折後の長引く痛みにお悩みの場合、また、保険会社の対応に疑問を感じた場合は、症状固定を迎える前に、交通事故と後遺障害問題に精通した弁護士にご相談ください。

弁護士 横川 主磨

執筆者

弁護士 横川 主磨

所属

  • 愛媛弁護士会(入会予定)

お電話089-968-2445

お問い
合わせ